「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ」 を読みました。
第1章 リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応
第1章の違法にアップロードされたサイトや、主に前記サイトに導くリーチサイトについては厳しく対応して貰って構わないと思います。主にと書いたのは例えば10%だったらOKとすれば、90%のゴミリンクを書けばOKとなるので、リーチサイトの目的が侵害コンテンツサイトへの導きであればダメとすべきと思います。違法コンテンツへのリンク情報を掲載するリーチサイトとして571のサイトの存在が把握されているらしいので、違法性を判断出来ていると理解しました。これを単にリンク行為も規制されるとか反対するがための揚げ足取りに使うのはおかしいかもと思います。但し、判断基準を明らかにしてくれないと取り締まり側の運用次第になりかねないとも思います。先ずは違法サイト自体への対策をやって欲しいです。プロバイダも違法サイトへは接続しませんと宣言して、ユーザーもそれに同意して加入する方法とか実現出来ないのかな?違法サイトへの通信量が多ければ、それを遮断することで多少なりともコストダウンになると思うけど。
第2章 ダウンロード違法化の対象範囲の見直し
問題の章です。注意書きとして『ここでいう「ダウンロード」とは,現行著作権法第30条第1項第3号に規定する「・・自動公衆送信・・を受信して行うデジタル方式の録音又は録画」について,対象著作物を音楽・映像以外にも広げたもの,すなわち「自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(注:有形的再製一般)」を指すものであり,例えば,ウェブサイトに掲載されたテキストをプリントアウトする行為や,そこでプリントアウトされたものを更にPDF化してコンピュータに保存する行為等を含むものではない。以下の記載でも同様の意味で用いている。』と書かれています。最低限プリントアウトすれば問題無し、更にそれをPDF化してもここで言うダウンロードでは無いとの事です。経費削減のために紙に印刷したくないな。残すためには直接PDFへ変換したいけど、それは駄目なのかな。
『出版社からは,特に,悪質な海賊版サイトについては, ①削除されたファイルを自動で再掲載するシステムがあること,②サイトを閉鎖させてもサーバーやドメインを変更して運営が継続されること,③新規サイトも次々と生まれること,④使用されているサーバー等や運営者が海外に所在することなどから,アップロード者・サイト運営者への削除要請等や法執行には限界がある旨が指摘されている。』との事。確かに違法サイトはそれくらいやるだろうし、「いたちごっこ」だとは思います。
下記は大事なところなので、Block quoteで引用しました。
(ア)ダウンロード違法化が行われる場合の前提
ⅰ 視聴・閲覧の取扱い
違法化されるのは,あくまで意図的・積極的なダウンロード(複製)行為であり,単に,違法にアップロードされた音楽・映像を視聴・閲覧する行為については,違法とはならない。また,視聴・閲覧に伴うキャッシュやプログレッシブ・ダウンロード(複製)についても,法第47条の8(新法第47条の4第1項)の規定により適法となる。
このため,ユーザーが意図せず違法にアップロードされた著作物を視聴・閲覧してしまった場合を含め,単なる視聴・閲覧に留まり,意図的・積極的にダウンロード(複製)行為を行わないのであれば,そもそも,ユーザーが法的責任を問われることはない。
違法かどうかを問わず単なる閲覧の場合はこの前提で外れることは分かった。
ⅱ 主観要件の設定
~~ 中略 ~~
このため,一般のユーザーが十分な確認をせず,気軽に,静止画やテキスト等のダウンロードを行う場合等については,そもそも,違法化の対象とはならない。
一般のユーザーは十分な確認などしないので、ダウンロードしても適用外ですね。
(イ)更なるユーザー保護のための措置を行う必要性・正当性
上記(ア)を前提とした場合,すなわち,(ⅰ)ユーザーが違法にアップロードされた著作物だと確定的に知っており,単なる視聴・閲覧に留まらず,私的使用目的で意図的・積極的にダウンロードを行うという場合に,なお,ユーザーの保護が必要と考えられる事例があるか,(ⅱ)そのような場合におけるユーザーの行為(違法にアップロードされた著作物から私的使用目的で意図的・積極的に便益を享受しようとする行為)を著作権者の利益保護よりも優先する正当性はあるか,という点について,ユーザー側の団体55に対するヒアリング・文書での照会も行いつつ,検討を行った。
ユーザー側の団体からは,そのような具体的な事例等は明確に示されなかったところであるが,委員からは,例えば,「アップロードされた著作物の一部分に違法なもの(例:法第32条の要件を充足しない引用)が含まれており,それが実質的に権利者の利益を害しないような場合」には,ダウンロード違法化の対象から除外する必要性・正当性が認められるのではないかとの意見があった。
「スクリーンショットも違法に?」で書いたけど、このような事例を私はやってますよ。私が撮った写真を違法にアップロードされていたので、そのページのスクリーンショットを保存しています。使用許諾していないので、違法だと確定的に知ってます。但し、この場合は実質的に権利者の利益を害しない場合に該当すると思います。自分自身の著作物をダウンロードする行為になります。それを私のブログに掲載する事は必要性・正当性有りだと思います。
③ 親告罪
いわゆるTPP11整備法(本年12月30日施行)により,著作権等侵害罪の一部非親告罪化が行われることとなるが,音楽・映像等のダウンロード違法化に係る刑事罰は,その対象となっておらず,引き続き親告罪のままであるところ,今回の対象範囲の拡大に当たっても,当然,ダウンロード違法化に係る刑事罰については,全て親告罪のまま維持することが適当である。
やっと親告罪の記述を見付けました。これって誰が親告するのかな? まさか違法にアップロードしているサイト側ですか? それって「盗人猛々しい」ですよね。当然、本来の著作権者だろうから、ダウンロードよりもアップロードが違法だと言いたいはずです。
※「パブリックコメントで提出された個別事例を受けた事務局としての考え方」に自らの著作物を複製することは可能と書いてありました。何故ダウンロードでは無く「複製」を使ったんだろう。自分の物を複製可能は当然で、今回の改正ではダウンロード行為の事を問いているのではないのかな。
元々、この記事を書き始めたのは下記を読んだからです。・「違法ダウンロードの範囲拡大」に潜む、重大な問題点 藤本由香里
記事中で紹介されている下記記事も読みました。
・ダウンロード違法化の対象範囲拡大に対する反対声明 日本マンガ学会
海賊版や二次創作研究などせずに、一次創作物を創ればいいんじゃないの? (※マンガ学会とは漫画家の団体ではなく、漫画研究者の団体との事) 誰もが日常的にウェブクリッピングしてはいないと思うけどな。閲覧はしてブックマークすることはあってもスクリーンキャプチャーまですることは日常的では無く圧倒的に少ないです。現在のインターネット環境では常時接続だからいつでも閲覧出来ます。SNSで出所不明の紹介されていても、検索して見ると出所が分かることも有りますよ。そもそも二次情報じゃなく、出所が確かな情報だけを参照すべきです。仕事だから、私的利用じゃないし、ちょっとだけ手間を掛けて合法か違法かを気にしてください。著作権者に辿り着けば、使用許諾を得ることも可能かも知れません。二次創作やトレースって結局のところパクリと同義語に近いと思います。「創作の糧にするのなら、ちゃんと買って読め」ではなく「創作の糧にするのなら、ちゃんと買って使え」でしょう。Twitterは偶に見る程度なので、「非常に貴重な資料や図像が流れてくる」かどうか知りませんが、添付された画像を更に引用する必要は無く、原本を参照すれば良いだけです。ブログやウェブサイトにはTwitterの投稿を埋め込みする事も可能です。原本を削除されたら消えますが、それって原本側が違法アップロードだったとかだと思います。プロだったら、貴重な図像を使って正当な二次的な創作品を作り新たに添付すれば良いのではないでしょうか。アイコンだって参考するだけなら、ダウンロードせずに自らの目で見て一部参照し、新たな創作アイコンを作れば良いんじゃないの。論文の盗用の様な研究不正の証拠であっても、著作権者に確認無しに盗用かどうかは確定出来ません。盗用を著作権者に確認する際に同時に使用許諾を取ることも可能かも知れません。使用許諾が取れればダウンロードしても大丈夫だと思うけど。
「懸念される嫌がらせや公権力の濫用」の一例に海賊版サイトが摘発され・・・が書かれていますが、そもそも海賊版サイトを利用しなければ良いと思います。「著作権について知っている人ほど有罪の可能性が高まる」とも書かれていますが、知っている人ならば余計に注意して危ないサイトを避けましょう。例えば違法動画が多いとされるYouTubeでも公式サイト以外を極力避けることは可能です。まとめサイトはパーソナルブロックです。
更に検索していたら、下記を見付けました。・「ダウンロード違法化」対象拡大…“マンガ学会”が反対する真意を聞いた
「マンガ学会のメンバーには大きな影響がある?」
海賊版、二次創作と分かって研究するらしい。でもそれが著作権許諾を取っているかどうかは分からないんじゃないの? マンガ学会だったら著作権者と連絡を取り易いと思うけど、研究に必要な使用許諾を取れないのかな? マンガ学会とは漫画家の団体ではなく、漫画研究者の団体との事ですが、漫画家と交流は無いんですか? 漫画家の団体があるかどうか知りませんが、漫画家やマンガ学会の間で創作や研究の為のダウンロードは互いに許諾すると取り決め出来ないのかな? 親告罪なんだから、互いに許諾すると世間に公表すれば取り締まりはされないでしょう。漫画家が合法・違法を問わず日常的にダウンロードする人ばかりならばお互い様ですよね。自称漫画家は排除、自分の作品を持っている人のみです。研究者は論文とか成果物を発表しているだろうからそれが作品です。もちろんお互い様でも、それをパクって自らの創作としては駄目ですよ。
海賊版への効果は「まったく期待できません」
これには全面的に同意します。
使用許諾を取ることが難しいことは実感しています。このブログでも使用許諾を得るために何度もメールで依頼しましたが、多くは返事さえも来ませんが不可能では無いです。テレビ局から使用許諾の連絡を貰ったことも有ります。また主従関係を満たした正当な引用を行うことは可能です。Googleマップなどは埋め込み可能だし、少し気を遣えばフェアユースとしてスクリーンショットも使用可能です。今のままの方向性で決まれば、誰もが「知らなかった」で免責されそうです。皆でダウンロードすれば怖くない! 自転車の逆走だって未だに取り締まりされていないのと同じです。取り留めなく長くなったのでこの辺でお終いです。